Dell PowerStore は Dell と EMC が会社統合されてから産まれた製品で、Dell Technologies のストレージカテゴリでは主力製品としてポジショニングされています。(「あれ?Dell Technologies のストレージカテゴリの主力製品は PowerFlex じゃないの?」と思ったアナタ!正直間違いでもないと個人的には思っていますが、 PowerFlex は HCI カテゴリに分類されています。)
いまだに Dell Technologies 内部では旧デル製品と旧 EMC 製品と別れているところもあるようですが、この PowerStore はストレージカテゴリではあるものの、旧デルのお作法に則っているところが多いです。たとえば、保守窓口とか。
PowerStore はリリースされた当初、オールフラッシュのユニファイドストレージのため、Unity の後継で Unity は終了に向かうのではないか?という巷の憶測が広く展開されましたが、Dell Technologies としては PowerStore は Unity の後継ではなく、Dell Technologies のストレージカテゴリの新しいユニファイドストレージとしてポジショニングされました。いろいろ Unity と似たところがあったため、社員を含め製品を取り扱っていただいているお客様やパートナー様は売り分けで混乱していたようです。2025/04/01 現在、Unity のオールフラッシュモデル(UnityXT xxF)は、販売終了(販売終了になったのはオールフラッシュモデルだけで、ハイブリッドモデルはいまだに元気にしております)となり、PowerStore はますますオールフラッシュアレイとしてのポジションを確固としたものにしています。
今後は、ストレージだけではなくサーバーも含めてフラッシュドライブの搭載に拍車がかかることになるのではないかと予想しています。その理由の一つは価格、もうひとつはスピードです。
HDD の人気の理由は容量単価が低いことが挙げられます。同じ容量のドライブを単純に価格比較すると HDD の方がまだ安価な状況ですが、容量単価は、単純なドライブ容量ではなく、そのドライブにどれくらいのデータを保存できるか?がカギになります。そうなると、データをドライブに保存するアーキテクチャが重要になり、各メーカーの技術力が問われることになります。
単純に高圧縮によるデータ容量の削減をすれば良いわけではなく、保存したデータを復元してサーバーに返す処理も必要になてきますので、それに CPU が使われるとなると CPU の能力も高いものが必要になってきて逆にその価格が製品の価格に跳ね返ってきてるとすると本末転倒なワケです。みなさんお使いの PC でもデータを圧縮したり解凍したりすると、プログレスバーが「ギューン」って動いて、そこそこ CPU パワー使ってますよね?そうなんです、圧縮解凍の処理って意外と CPU パワーが必要な処理なんです。
そこで、データを圧縮する能力はほどほどにしなきゃいけないような気もするのですが、じつは PowerStore の圧縮処理は CPU では行っておらず Intel の QAT を使って圧縮しているため、圧縮のための CPU パワーは考えなくても良いのです。これでも、左うちわで「データを QAT に渡せばいいだけ」になるはず、なんですがそうはいかず、PowerStore のスゴさは QAT に渡すデータの幅にあるんです。じつは、このデータの幅は一定ではなくいろいろな長さで渡されて圧縮されてるんです。一般的には可変長ブロックと呼ばれていますが、4KB~8x4KB の幅で最適な幅で QAT に渡しています。
Dell Technologies は、PowerStore は All Flash に最適化された次世代のストレージとしてポジショニングしているため、まったく Unity と被らない、と言っていましたが Unity も All Flash もラインナップされていましたので説得力に欠けていました。さらに、PowerStore は当初 Unity よりも機能や性能で後れを取っており価格もまだ高かったので、あまり市場には浸透しませんでした。しかし、いま(2025/04/01 現在)では PowerStore OS も 4.1 まで上がっており、Unity と比較しても、より多くの機能を有していますし、パフォーマンスもハードウェアの進化も伴って向上しています。唯一フラッシュドライブがいまだに高いのは想定外でしたが、それを払しょくしてくれるデータリダクション機能がとても有能です。
ここでは PowerStore がオールフラッシュに最適化されている理由というか背景というか、どういう点がオールフラッシュストレージに最適化されていると言っているのか、アーキテクチャのところを少し掘っていきたいと思います。
PowerStore はミッドレンジからエンタープライズまでカバーできるいくつかのモデルがあります。違いは、搭載されている CPU やメモリのほか最大容量など違っていますが機能はどのモデルでも同じなので基本的にはパフォーマンスが違う、と考えればよいと思います。新しくなったり、ハードウェア的にアップデートされたりすると情報が古くなってしまうので、最新の情報についてはデル・テクノロジーズのサイトから SPEC SHEET を参照ください。
PowerStore のデータリダクション(データ削減)は「圧縮」と「重複排除(ちょうふくはいじょ)」により容量削減を行っています。
SSD は HDD と比較したら容量単価が高いです、まだ。EMC の予想だと 2023 年には HDD と SSD の容量単価が交差し逆転する、と予想されていましたが現状はそうでもなさそうです(まだ SSD の方が容量単価が高い)。とはいうものの、HDD の容量単価は下げ止まり、SSD の容量単価は下がってきていますが世界経済状況の影響か鈍化しています。HDD 製造するメーカーも減ってきており、発注量も少なくなってきていることから下げ止まりになっていると考えられ、逆に SSD は需要が高まっている(SSD を採用するメーカーやモデルが多くなってきている)ことから、製造単価が下がっているが、昨今の情勢により降下が緩くなってきている気がします。実際に DiskPrices が今のドライブ価格を Amazon などの量販店を調査し、1GB 容量単価を算出していますので参考になさってください。
となると、まだまだ HDD の容量単価が安いから、よっぽどパフォーマンスに問題がなければ HDD のままで構成するのが世の常なのですが、それでは SSD への移行が進まないため、オールフラッシュストレージは容量単価を下げるためにデータリダクション機能を組み入れてきています。しかし、諸刃の剣で容量単価を下げるためにデータリダクションの効果を上げるとパフォーマンスに影響するため、ほどよいところでデータリダクションを中断したり、ゆるくしたり、各社工夫を凝らしています。
PowerStore のデータリダクションは前述のとおり「圧縮」と「重複排除」で構成されていますが、それぞれの内容についてみてみます。
システムのプロセスとしては、サーバーから送られてきたデータをフラッシュドライブに書き込む前に最初に行われるのが重複排除処理です。ある程度のブロックにデータを区切り、同じデータがある場合は、保存しないでカウントを上げるだけ、にします。いままでは足し算だったのですが、この重複排除機能はかけ算といったところでしょうか。2+2+2 じゃなくて 2x3 って覚えるんです。
CPU が忙しいときは重複排除の処理を行わず、落ち着いてから改めて重複排除処理をする、という仕様に変わっています。PowerStore はインラインで重複排除するのですが、忙しいときだけポスト処理になる、という柔軟な作りになっていてパフォーマンスを損なわないようなアーキテクチャになっています。